愛は満ちる月のように
あまりこくのない醤油だったことは覚えている。

向こうでは高級と言われる寿司屋に入ったときも、少し深めの皿になみなみと入れて出してくれた。


「そういえば……生クリームが入っているのがあったような」

「ええ、そうね。あと、チョコレートとか」

「寿司はやっぱり生の魚だよ」


悠がそう言いながら生サーモンを口に放り込んだとき、美月が彼の肘をトントンと突いた。


「ね、ユウさん……アレ」


美月が指差した方角から流れてきたのは、アボガド入りのカリフォルニアロール。のりとご飯を巻く順番が逆になっているヤツである。

美月はにこっと笑うとカリフォルニアロールの乗った皿を取った。

上手に箸でつまむと、悠の前に差し出す。


「はい、ユウさん。召し上がれ」

「いや、だから……」

「アボガドはとっても健康にいいのよ。好き嫌いはダメよ。それとも、私が食べさせてあげるのが気に入らないの?」


そう言われては、イヤ、とは言えない。

どう考えても生ウニの報復にしか思えないが、観念して口を開ける悠だった。


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