愛は満ちる月のように

(9)月夜の恋人

一週間はあっという間に過ぎていった。

悠は決して美月の気に入らないことはしなかったし、彼女の意見を尊重してくれた。お城や遊園地、動物園、美術館、映画館やゲームセンターまであらゆるデートコースを回った。

極めつけは……ラブホテル。


アメリカには日本のラブホテルと同じようなホテルはない。場所によってはそうとしか取れないホテルもあるが、治安が悪く、普通の恋人同士が利用することはないという。

モーテルもピンからキリまであり、決して『セックスをするための場所』ではなかった。

仕事柄、美月も危険な場所に出入りすることもある。

それは、強引に連れ込まれた少女たちからのSOS。そういった場合、シェルターの同僚やときには警官と一緒に、その手のホテルに乗り込む。どこも一様に薄暗く、退廃的なムードを漂わせていた。



しかし今回、悠と一緒に入った場所はまるで違う雰囲気だ。なんと、そこにはカラオケがあった。

美月が驚くと、


『ここは全室通信カラオケがついてる。市内のラブホテルはほとんどそうじゃないかな』

『ユウさんは色んなラブホテルを利用してるのね』

『……君のご希望どおり、ベッドが回転するタイプの部屋を予約しておいたから』


悠は咳払いをして話を変えた。


美月にとって、こういったホテルの部屋が予約できることにもビックリだ。悠は必死で『いつもしている訳じゃなくて、君のためにネットで探して予約したんだ!』と主張していたが……真偽はよくわからない。


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