愛は満ちる月のように
ラブホテルのデート以来、自宅のお風呂にも一緒に入るようになった。

浴槽も洗い場も広さ的には遜色ない。

さすがに“プレイマット”を置くスペースはなかったが、『お気に召したのなら、また予約して行こう』そう言って悠は笑っていた。


お風呂から上がり、髪を拭きながら美月はルーフバルコニーに出た。

さっきまで上弦の月が綺麗に見えていた。だが、零時を回るともう見えない。

これから少しずつ月は満ちていく。夜空にいる時間も長くなり、あと一週間で満月になる。こればかりは、動かすことのできない現実。

それをタイムリミットに定めたのは美月自身だった。


「何を見ているんだい?」


悠もバルコニーに出てきた。

濡れた髪となんの変哲もない黒いTシャツと短パンが、彼を五歳は若く見せている。思わず、うっとりと見惚れてしまい……美月は慌てて夜空を見上げた。


「……月よ」 

「もう見えないのに?」

「私には見えるの」

「僕にも見える……ここに美しい月がある」


背後から悠に抱きしめられ、美月は心が震えた。


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