愛は満ちる月のように
それは抗いようのない至福の時間。自分からは離れたくない場所だった。


「ん……一応、行ってくる」

「一応って?」

「休暇の延長を申請してくるよ。まだ、僕が頼んだ法律事務所から連絡はないし、君をひとりにするのは不安だし……」


もっと悠の傍にいられる。それは嬉しい反面、さらなる苦しみを意味していた。


「そんなに休んでいたら、クビになるわ」

「そのときは君の助手にでも雇ってもらおうかな」

「冗談はやめて……」


美月は身体を起こし、悠から離れようとした。

実を言えば、まだふたりはひとつになったままだ。立ち上がろうとした美月の腰を掴み、悠は彼女を解放しようとはしなかった。


「ユウさん、離して。これ以上ふざけないで!」

「本気だと言ったら?」


美月の呼吸が止まる。

彼女は食い入るように悠の瞳を見つめた。ふたりの間にあった隔たりに橋がかけられたような気がして、美月が悠の頬に手を伸ばした瞬間――。

恋人たちの時間はあえなく終わりを告げたのだった。


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