愛は満ちる月のように
第4章 過去
(1)兄と弟
『一条様の弟と名乗る方が来られているのですが――』
悠が美月との関係にもう一歩踏み込もうとしたそのとき、インターホンが鳴った。画面に映ったのは、エントランスにあるフロントの管理人だ。
管理人は二十四時間常駐し、夜間は警備員もふたりいる。何かあれば、直線距離で二百メートルの警察署に、直通の連絡がいく仕組みになっていた。
もちろん、悠の安全に配慮した、藤原と一条の力だ。
「弟……だって?」
心当たりがない訳ではない。
だが、なんといっても深夜の一時になろうかという時間。たったひとりの弟は、簡単に訪ねて来られる距離に住んではいなかった。
「名前は? 身分証は確認してないのか?」
肝心なところで邪魔をされたこともあり、悠は苛立たしげに聞く。
『申し訳ありません。お顔を拝見したときにご兄弟だと思ったもので……。すぐに身分証を』
管理人の言葉を聞いた瞬間、悠は来客が誰か確信していた。
悠が美月との関係にもう一歩踏み込もうとしたそのとき、インターホンが鳴った。画面に映ったのは、エントランスにあるフロントの管理人だ。
管理人は二十四時間常駐し、夜間は警備員もふたりいる。何かあれば、直線距離で二百メートルの警察署に、直通の連絡がいく仕組みになっていた。
もちろん、悠の安全に配慮した、藤原と一条の力だ。
「弟……だって?」
心当たりがない訳ではない。
だが、なんといっても深夜の一時になろうかという時間。たったひとりの弟は、簡単に訪ねて来られる距離に住んではいなかった。
「名前は? 身分証は確認してないのか?」
肝心なところで邪魔をされたこともあり、悠は苛立たしげに聞く。
『申し訳ありません。お顔を拝見したときにご兄弟だと思ったもので……。すぐに身分証を』
管理人の言葉を聞いた瞬間、悠は来客が誰か確信していた。