愛は満ちる月のように
それは予想外の答えだった。

美月自身、そんなに昔から悠の姿を追いかけてきたつもりはない。


「それは……見ていたかもしれないけど、そんな特別なものじゃないわ。私にも兄がいたらよかったのに、と……それだけよ」
 

そう答えて、美月は小太郎の抱くウサギに手を伸ばす。


「そうかな……ん、俺の気のせいかもしれない」


真は小さな声でそう言った。


悠に惹かれたのはボストンで再会してからだ。

そう思う反面、他の誰にも近づかなかったのに、悠の姿を見るなり話しかけてしまった。あの衝動に理由があるとしたら……それは“恋心”だったのかもしれない。

そんなふうに認めてしまいそうな美月もいた。
 

美月は途中の売店で飲み物を買い、ベンチに座る。

真と小太郎は動物に餌をやるのに夢中だ。幼稚園くらいの子供たちと一緒になってはしゃぐふたりを見ているのは楽しい。でも、もしここに悠がいたなら……。

小さな子供の手を取り、馬に餌をあげようとしている。そんな真の姿が悠に重なり、美月は愕然とした。


(何を考えているの? 無駄な夢は見たらダメだって言ってるじゃない。ユウさんは絶対に子供は欲しがらない人なんだから……)


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