愛は満ちる月のように
沙紀は予想外にも憫笑(びんしょう)を浮かべたのである。


「あら怖い顔。でも、私にその手の脅しはきかないわよ。なぜだか教えてあげましょうか、お嬢ちゃん。私の父親は、一条聡というの」

「……何をバカな……」

「嘘じゃないわ。だって彼は私の母と結婚していたんだもの。――そうよ。悠は私の異母弟。あの子は実の姉に手を出して妊娠させた鬼畜ってこと。そのことがバレて、母親に絶縁されて家を追い出されたの。それがあなたのご主人の本性よ」


魔女のような沙紀の笑顔に、声を失ったのは美月のほうだった。


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