愛は満ちる月のように
「そんなに見られるのが怖い? 形だけの夫婦じゃなくて、セックスしてるって知られたら困るの?」


美月の挑戦的な言葉に悠は息を飲んだ。


「十六歳の私に大人の分別を発揮してくれたことは感謝してる。でも、私はもうティーンエイジャーではないわ。何かを決めるのに、保護者の許可はいらない年齢なのよ。知らなかった?」


ネクタイの両端を引っ張られ、悠が身を屈めたとき美月と唇が重なった。

それがスイッチのように、悠の心は複雑な感情で満たされた。

何かに駆り立てられる気分で彼女の腰を抱き寄せ、より深く口づける。それは互いに奪い合うような、刹那的なキスだった。

美月はシャツ越しに悠の身体に触れる。胸元に触れたあと腹部を撫で、脇腹を擦りながら背中に手を回した。胸に頬を当て、ギュッと抱き締める。

悠は言葉もなく、彼女の髪に顔を埋めていた。


「ユウさん……聞きたいことがあるの」

「何?」

「私、あなたのお姉さんに会ったわ」


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