愛は満ちる月のように
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『パパはたくさんの罪を犯した。でも……奈那子が美月を与えてくれて、やり直すチャンスをくれたんだ。だから、もしここで死んでも、自分のせいとは思わないでくれ。パパの命を価値のあるものにしてくれて……ありがとう』


八年前の事件で美月の父が撃たれたとき、父は死を覚悟してそんな言葉を口にした。

十代後半から二十代前半の父が、とても人に話せないほどの悪行を繰り返したことは知っている。お節介な人間はどこにでもいて、中学生の美月に色々なことを教えてくれた。

だが、たとえどんな過去を耳にしても、美月には父を嫌うことはできなかった。

同時に、母もすべてを許し、ともに贖罪の道を歩もうとしていたことを聞き……。美月はより一層、母の代わりになりたいという思いを強くする。

父は命の危機に瀕したときですら、自分が美月や小太郎の実の父親ではないとは言わなかった。


人生に、過ちを犯したと気づいたときは、取り返しのつかない過ちではない。


美月はそんな思いを胸に弁護士になった。

法により裁かれても自らの過ちを認めない人間もいる。そんな人間と父が同じであるはずはない、と。


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