愛は満ちる月のように
悠は美月の身体に溺れるように抱きついてきた。

性急に彼女を求め、一刻も早く繋がろうとした。悠は父親を信じていないのではなく、ましてや母親を許せないのでもない。

彼が何年も許せない人間がいるとしたら、それはたったひとりだろう。


「美月……悪い……こんなつもりじゃ」


部屋着の裾をたくし上げただけで、彼自身は上着すら脱がずに押し込んできた。

それは教会の敷地内で、生垣の影に隠れるように彼女を抱いたときより、さらに切羽詰まった様子だ。


「いいの。構わないから、抱いて」

「君を抱くのは間違ってる。そうと知りつつ……僕は最低の男だ」

「それで気が済むなら……最低の男になって。私と一緒に堕ちてちょうだい」


悠は驚いたような顔をする。


「私も……あなたが思っているような女じゃないわ。可愛い女でも賢い女でもない……」


美月は彼の耳元でささやくと、長くしなやかな脚を悠の腰に絡めた。


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