愛は満ちる月のように
(5)愚かなマリオネット―1
太ももが柵に当たり、美月は足に力を入れて踏み止まろうとした。
だが、それだけで上半身を起こせるような力はない。柵に当たった部分が滑り、半身以上が空中に振られた瞬間――目を閉じた。
(ダメ……落ちる……)
直後、何かが背中に張り付くような衝撃を受ける。
驚いて目を開くと、ふいに視界が二転三転した。誰かが彼女を背後から抱き締め、どういったプロセスを辿ったのかわからないまま、唐突に視界が定まった。
柵越しに、真っ青になってこちらを見ている千絵に姿がある。
ということは、どうやら美月は柵を乗り越えた状態で止まっているらしい。
「美月さん! 大丈夫か?」
千絵の横から現れた那智の額には大粒の汗が浮かんでいる。
(ええ、なぜだかわからないけれど……大丈夫です)
そんな言葉が心に浮かび、声にしようとするのだが息を吸い込むばかりで声が出ない。
「大丈夫だ。もう、大丈夫だから、ゆっくり息を吐くんだ。力を抜いて……できれば、首に手を回して抱きついてくれたらありがたい」
真後ろから悠の声が聞こえた。
だが、それだけで上半身を起こせるような力はない。柵に当たった部分が滑り、半身以上が空中に振られた瞬間――目を閉じた。
(ダメ……落ちる……)
直後、何かが背中に張り付くような衝撃を受ける。
驚いて目を開くと、ふいに視界が二転三転した。誰かが彼女を背後から抱き締め、どういったプロセスを辿ったのかわからないまま、唐突に視界が定まった。
柵越しに、真っ青になってこちらを見ている千絵に姿がある。
ということは、どうやら美月は柵を乗り越えた状態で止まっているらしい。
「美月さん! 大丈夫か?」
千絵の横から現れた那智の額には大粒の汗が浮かんでいる。
(ええ、なぜだかわからないけれど……大丈夫です)
そんな言葉が心に浮かび、声にしようとするのだが息を吸い込むばかりで声が出ない。
「大丈夫だ。もう、大丈夫だから、ゆっくり息を吐くんだ。力を抜いて……できれば、首に手を回して抱きついてくれたらありがたい」
真後ろから悠の声が聞こえた。