愛は満ちる月のように
「私のマンションにかけてきたのも君だ。千絵、私たちの関係で謝罪しなければならない相手がいるとしたら、それは妻だけだ」

「でもっ……あなたの結婚は嘘だと聞いたんだもの。……彼女も言ったわ。もうすぐ離婚するって!」
 

千絵の言葉に悠の顔が曇る。

美月も自分の言ったことだけに、どうフォローしたらいいのかわからない。


「一条さんの結婚は嘘で、私と結婚するつもりでいるって……そう聞いたから、だから父にも話してしまったのよ」

「聞いた? 誰から聞いたと言うんだ!?」

「父があんなことをするとは思わなかったし……。今さら、本当に結婚してて……捨てられたなんて言ったら……」

「私の質問に答えろ! 君はいったい誰から私の話を」


焦点の合わなくなった千絵を怒鳴りつける勢いで悠は尋ねる。

それを引き止めたのは美月だった。


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