愛は満ちる月のように

(5)愚かなマリオネット―2

二時間後、『十六夜』の上にある那智の私室に三人はいた。

つい先ほどまで千絵もいたが、彼女はすべてを告白すると美月に謝罪して引き上げていった。


「しかし……とんでもない女に見込まれたもんだな」


千絵が帰ったあと、悠からひと通りの話を聞き那智はため息をつく。


「中々姿を見せないと思ったら、まさか、あの女が千絵の裏で手を引いてたなんて……」


よほどショックだったのか、悠は呻くようにつぶやくとうつむいたままだ。

那智は美月に向き直り、


「こういうことは犯罪にはならないのかな?」

「遠藤沙紀のやり方は巧妙だから……。むしろ、植田さんのお父様のほうが罪に問われるでしょうね。まあ、自業自得と言ってしまえばそれまでだけど……」


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