愛は満ちる月のように
だが、そんな茶番に乗せられる美月ではない。

一歩近づくと沙紀のバッグに手を押し込んだ。


「何すんのよっ! 勝手に人のバッグに」


中からボールペンを少し太くしたようなICレコーダーを取り出す。それは録音中のグリーンライトが点灯していた。


「これは秘密録音ね。時と場合によっては違法行為になるのよ」

「あ、安全のためよ……誰もいないとなると、脅迫されるかもしれないから……。それだけよ」

「そう……。なら、ここでの話し合いはやめておきましょう。もう、必要ないわね」


ボタンを押し、録音を停止させる。

沙紀の思惑など知れたことだ。美月を怒らせ、金と権力で精神病院に入院させる、と言わせたかったのだろう。


途端に沙紀の表情が変わり、美月を見据える目の色も変わった。


「あなたの父親って、あの藤原グループの人間なんですって?」

「だから?」

「私もそろそろいい歳だし……疲れたのよね、こういう暮らし。まとまったお金が手に入るんなら……もう、ユウくんに付き纏うこともなくなるんじゃないかしら」

「……」


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