愛は満ちる月のように

(7)神様の贈り物

『ミツキ先生、お客さんよ』


個室のドアがノックと同時に開く。美月より少し年下の赤毛の女性、リア・ユーイングが顔を出して用件だけを端的に告げた。

美月はパソコンのキーボードを打ちながら、顔も上げずに返事をする。


『来客? そんな予定はあったかしら?』


ダークブラウンの髪をひとつに縛り、ポニーテールの毛先が肩より少し下で揺れていた。

ボストンに戻って来て彼女が一番にしたこと。それは、失恋の定番、髪を三十センチ近く切ったことだった。


『さあ? わかんないけど……男の人だった』


リアの声のトーンが下がった。

彼女は交際中の男性から酷い暴力を受け、売春を強要されたことがある。でも、立ち直りも早かったため、シェルターに残り、雑用の仕事を手伝ってくれている。

二年経っても男性恐怖症が残っていて、外に出て働くのが厳しいという理由もあった。


『わかったわ……じゃ、応接室に』

『所長が話をしてたから、所長室にいるんじゃないかな?』

『OK。五分以内に行くって伝えて』


美月はスッと片手を上げ、リアにウインクで答えた。


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