もっと…
教室に居るのが窮屈になり、梓はお弁当を持って中庭にやって来て、芝生の上に座り込んだ。



ここなら誰も居ない。



と、思ったのに……




「よっ!梓」



「はぁ…」



やっぱ、一人にはなれないか…


梓の隣に堂々と座る伊東。


よく見ると、お弁当らしき物は無かった。



「お弁当は?」



「持って来てない」



「はぁ!?お腹空かないの?そんなんじゃ午後集中出来ないわよ?」



「あれ、心配してくれんだ(ニヤ」


カァァ///


私別にそういう意味で言った訳じゃないんだけど



無意識に顔が紅く染まった。



「何で紅くなってんの?もしかして照れてるとか!?(ニヤ」



「ち、違うわよ。何言ってんの。俺様もいい加減に…」



梓の台詞を遮り、伊東は…



ギュッと優しく抱き締めた。



不覚にもドキドキしてしまった。



「ちょっと…、離してっ!!」



「無理」



即答っ!?



ヤダ…ッ。早く離して……


そんな寂しそうな顔で私を見ないでっ



ほっとけなくなる…。




「梓…」



「何…?」



伊東は梓の髪をそっと撫でる。


その手は、充分すぎるくらい






優しかった。






「俺の事嫌い……?」




え……っ!?



「別に…嫌いじゃない……けど」



そう、嫌いじゃない。

ただ、それ以上に新妻先生の事が好きってだけ…。



「お願いだから……俺と付き合って…っ」



そい言った伊東の声はいつもより弱々しくて…



何だか……すごく愛おしく感じて…


この人を護ってあげたいと思った。





ふと浮かんできたのは新妻先生の笑顔…


だけどね





「うん、いいよ」




私にはこの時、断るという選択は無かった。
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