もっと…

孤独…

ウザい……


さっきからコイツ…ッ。



「おいっ、梓聞いてんのか!?」


「うるさいわね黙ってなさいよ!それに、私の事気軽に下の名前で呼ばないで」



わざわざ3組にまで来て梓の気を引こうとする伊東春樹…。



そんなバカを無視して次の授業の用意をする。


…次、新妻先生の授業……。


新妻先生を無視している間にも数学はある。


あっ、勿論授業には出ているわよ?


ただ、なるべく新妻先生と目を合わせないようにしているだけ。



「なぁ、梓~!」



「あーもう、うるさい!さっさと教室戻りな。もうすぐチャイム鳴るわよ?」



ヘイヘーイ…と力の抜けた声を出し、伊東は教室に戻った。




はぁ…。これで女子共のウザい視線から逃れられる。


伊東は顔だけは無駄に格好いいから、ファンが沢山居る。

そいつらの嫉妬の眼差しが……。



ほんっと、はた迷惑な人…。



黙ってれば…私好みなんだけどな…。




黙ってれば………









「梓………川瀬梓ッッ!!」



「は、はいっ!?」



って、あれ…?新妻先生っ!?


梓の席の近くまで来ていて、不機嫌そうに眉をしかめる新妻先生。



梓は腕時計を確認すると






じゅ、12時ぃ!?



え…さっきまで11時30分じゃなかった…?


いつの間にか、4時間目が始まっていた。



私どんだけ妄想に浸ってんのよっ!!


しかも、考えていたのは伊東の事で……



「川瀬は放課後、数学準備室にまで来るように」



「あ、はい…」



何かヤバい雰囲気…。


怒っちゃったかな…新妻先生。


梓は今日何度目かも分からないタメ息をついた。




行かなきゃ…いけないよね。

あんまり二人きりじゃ会いたくないけど






「これで今日の授業は終わりだ。明後日の授業までに○ページをやってくるように!」


――はぁーい!!――


目をハートにさせて答える女子と、

詰まんなそうにその光景を見ている男子。


梓はというと…



何…?何で新妻先生はあんなに人気な訳?



何故だか胸の奥がキツく締め付けられた気持ちになった。


教室から出ていこうとする新妻先生を足止めし、“数学が解らない"事を口実に

新妻先生の周りに集まる女子…

新妻先生は笑顔で質問に答えている。





ズルい……



私だって新妻先生と話したい…

動こうにも何故か足が動かなかった。



梓は机の上にお弁当を広げ、一人寂しくご飯を口にした。


今日朱里は休み…



寂しい…

一人なのは別に構わないんだけど


大好きな人が目の前に居るのにそれを見ている事しか出来ない…



そんな弱虫な自分に腹がたった。
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