黒いチューリップ

タイプ

クラス全員が揃い、HRが始まった。

「このクラスの担任になった沢井だ。よろしくなーっ」

沢井先生、決してイケメンじゃないけど、若くて爽やかで良い感じ。

顎に生えてる髭が残念だけど。

美月は、ぼんやりと肘をつきながら先生の話を聞いた。

「先生結構良くない!?」
「だよねっ」

後ろの席の女子が、コソコソ囁きあってる。

早くHRなんて終わればいいのに。

キーンコーン…

予鈴が鳴り、やっとHRが終わった。


「HRってこんな長いもんなんだねー」

優香は机に足をドカッと乗せて、まるで男子のようだ。

「なんて先生だっけ」
「沢井先生でしょ?」
「あーそれだ」

沢井先生は今、廊下で女子と楽しそうに喋っている。

いきなりモテてるじゃん、先生のくせに。

美月は小さくため息をついた。

教室内を見渡せば、男子があちこちではしゃいでいる。

まるで子供のように。

「ね、誰かタイプの人見つかった?」

澪が目を輝かせながら聞いた。

タイプの人…ね。

優香がガバッと起き上がって、はいはいっと手を上げた。

「斜め前の席の子、顔が超タイプだったー」

「え、どれどれっ」

澪はすぐさま食いついた。

私は正味、顔なんて並みで十分だし。

もちろん性格が良ければの話だけど。

「あーまあイケメンかな」
「でっしょ!」

2人の目線の先にいる自称イケメンは、多分窓の所でカーテンをいじってる子だな。

「顔とかなんでも良くない?」
「何言ってんの!顔も重要なんだって!」

澪がグイグイ言葉で私を押してくる。

相当面食いだな、澪って。

「や。何話してんの~?」

急に後ろから2人の男子に声をかけられた。

「あ、山下!」

優香が親しく応答した。

どうやら中学が一緒だったらしい。

「山下はね、小3の時からずっと仲良いの。幼なじみみたいな、兄弟みたいな存在かなーっ」

そう言って優香は山下の腕にしがみついた。

「へー。随分仲良さそうじゃん!」

美月がからかうように言ったら、優香も山下も平然とした顔で首を横に振った。

「ないない。まずお互いを恋愛対象に入れてないし…ねー?」

山下は迷うことなく、頷いた。

いわゆる友達以上恋人未満ってやつかな。

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