ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-





そのとき、私の左手の薬指にある指輪が熱を帯びている気がした。
…“ぬしを守る”と言った愁の声が私から恐怖心を取り去ってくれるみたいだ。



「…なにがそうさせるの?」


だからだろうか。
口を挟んじゃいけない場面にも関わらず私はそう訊ねていた。


その声に、二人は一斉に私を見る。特に梗からは怒りと憎しみのこもった視線が飛んでくる。
それでも私はかまわずに、うまく動かせない腕をなんとか動かして私の喉元を掴む梗の手首に触れた。



「ねぇ。人を巻き込むならしっかり話してよ。あなたは――…」


「僕の母はそこにいる男の母を憎んでた。だから僕に自分の心臓を差し出した。………禁忌とされる魂の術。それでもって力を付けて、兄を殺せと…」





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