ある夕方の拾いモノ -狐と私、時々愛-
………太陽は空の真上に上っていて外は明るいのに、この部屋にはあまりその日差しが差し込んでこない。
眠り続ける私に配慮するように薄暗くされたこの部屋にいると、世界中に私と愁しかいないようなそんな錯覚すら覚えてしまう。
私が自分の気持ちを告げたあと、しばらく愁は身じろぎ一つしなかった。
「…愁。ねぇ、愁?」
沈黙に耐えられなくなった私が愁の身体を揺すっても愁は何も言わない。
気にくわなかったのかな、と焦った私は無理矢理愁から離れようとしたのに、愁の腕はそれを許さない。
もがくと傷に響くために動くこともできなくなった私の耳に、やっと愁の声が届いたのはそれからすぐ。
「…誠か?」