クロス†ハーツ


「す、すみませーん…」


水瀬に反論することだけを考えていると、誰かが控えめに声をかけてくる。

振り向いてみると、その顔はどこかで見たことのある顔だった。


「あ、あれ?あなた、中等部生徒会の、子?」

「はい…!あの、風紀委員の方々ですよね?そろそろステージ脇で待機して頂きたいんですけど…」


彼がそう言うと、水瀬はにっこりと笑って。


「分かりました。ありがとう。すぐに行くよ」


今まで私と言い争っていたのが嘘のように、そう言った。

私の方に振り向くと、今の爽やか笑顔はどこへ行ったのやら、眉間に少ししわを寄せていて。


「雨宮、行くぞ。とちるなよ」

「い、言われなくても…!」

「じゃ、行ってくるな」

「おー!」

「頑張ってね、2人とも」


あっという間に、水瀬は雅矢くんと尚人に一言言って、私の手を引く。
そのせいで、私は少し前のめりになって、転びそうになる。


「ちょ、ちょっと…!歩けるんだけど!」

「うるせー。お前は放っておくと逃げるかもだろ」

「は…!?」


そんな言い合いをしている間に、ステージ脇に着いてしまった。
すると、水瀬は自然に、今まで掴んでいた私の手を離した。

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