クロス†ハーツ
すると、厳しい面持ちで真ん中にいる男子生徒が口を開く。
「僕は先日の選挙で2位になり、風紀委員長になった1年B組の水瀬薫です」
その場にいた女子生徒のほとんどが息をのんだ気がした。
ここにいる候補の子達は、ほぼ水瀬狙いだからしょうがないのかも。
選挙とは、毎年夏休み前にやるんだけど、それは学園の二大勢力のトップ、生徒会長と風紀委員長を決めるために行う。
1位を取ったら生徒会長、2位を取ったら風紀委員長になるのだ。
今年の1位と2位の差は、一桁らしい。すごい接戦。
次に3人の中で唯一の女子生徒が自己紹介に入る。
「私は副委員長の2年A組桜沢早菜。去年からずっとだから、みんな知ってるわよね?」
……ごめんなさい、知りませんでした。
私ホントに興味ないから、名前は知ってたけど顔知らなかった。
でも本当に綺麗な人だな。
「僕は書記の風見雅矢です。1年B組です。よろしくお願いします」
最後の男子生徒は丁寧にお辞儀をしていた。
隣のクラスだし知ってる。
いつも水瀬薫の隣にいる人だから。
全員の自己紹介が終わると、また水瀬薫が口を開く。
「本当はあともう一人。会計から副委員長になった青山尚人という委員もいます。彼は今日は欠席…みたいです」
水瀬がそう言った瞬間、桜沢さんの顔がひどく歪んだ気がした。
しかし桜沢さんはすぐに気を取り直して。
「えっと、尚人が会計から副委員長になったことで、会計に空きが出ます。なので、皆さんの中から一人会計に入ってもらうことになるわ」