女王様のため息
まさか、奈々ちゃん本人の話題を一番に知らされるなんて思ってもいなかったから、それを聞いた小会議室での私は『えーっ』っと声をあげずにはいられなかった。
「だから、年末に退職する事にしたんだ」
「急だねー。もしかして、できちゃった?」
「え?……あ、ち、違うよ違う。できたわけじゃないよ」
右手を目の前で横に振るその一生懸命な顔が面白くてもっとからかってみようかと思わないでもないけど、あまりにも真っ赤な顔を見せられて、にやりと笑うだけにとどめておいた。
「わが社のお姫様をゲットした幸せな王子様って、誰?まさか、社内?」
これくらいの質問は許されるよね。
さあさあ、とでもいうように体を近づけて、テーブルの向こう側にいる奈々ちゃんに聞いた。
「お姫様」というのは彼女が入社した時につけられたあだ名。
細くてすっとしたスタイルと、小さなかわいらしい顔から男性にはかなりの人気があるのに、人見知りがちなおとなしい性格のせいか、これと言って浮いた噂もない「姫」。
「女王様」と呼ばれる私が、一人で生きていける強い女なら、「姫」と呼ばれて私の対として置かれている奈々ちゃんは、みんなが守らなければいけない弱い女の子。
自然にそういう位置づけで認知されている私達だけど、実際は性格に似ているところも多いし、奈々ちゃんは意外にしっかりとしていて強い。