女王様のため息
「すみません、まだ司を説得できてないんです。
でも、やっぱり司にはいい経験になるだろうし、もう少し話してみます」
きっと、相模さんは司の成長を願っているはずで、そのためにはいい経験になる現場への担当に就けたいと思っている。
それだけ司には仕事をこなせる能力があるという事で、私のせいでそれを潰してしまうわけにはいかない。
「司は、仕事の事を軽く考えているわけではないんですけど、今は結婚にしか気持ちが向かないようで……すみません」
頭を下げて謝る私を、相模さんは明るい声で制すると。
「まあ、そうだろうな。司を見てると、あいつの頭の中には絶えず結婚行進曲が流れてるみたいだからな。
それを隠そうともしていないのが笑えるんだけど」
くすくすと声を漏らす相模さんを見ると、全く気を悪くしているようではなくて、自分の言葉に自分で納得しているみたいだ。
この前、司を説得して欲しいと言ってくれた時の相模さんとは印象が違っていて戸惑ってしまう。
そんな私の思いを察してくれたのか、申し訳なさそうな表情を浮かべて
「無理を言ってしまったようで、悪かった。申し訳ない」
「あ、いえ、そんな……」
突然謝る相模さんに、訳がわからない。
「司に言われたよ。同じような現場に巡り合う事はこの先いくらでもあるだろうけど、真珠との結婚を軌道に乗せる楽しみを味わえるのは一度しかないって」
「は、はあ?」
「そうだよな、驚くよな。俺もそんな事を言われるなんて予想してなかったよ」
呆れたように呟く言葉だけど、その中に司への怒りは感じられなくて、それだけはほっとした。
けれど、司の言葉を聞かされて、一気に顔が熱くなった。