女王様のため息

どこかもったいぶった口調には、『もったいなかっただろ』という、いたずらっ子特有の面倒くささも混じっている。

昔から、見た目の良さと、どこか意地悪な性格が受けて女の子に人気があった。

既に大人になっている今だって、見た目はさらに磨きがかかって艶めくし、強気でつかみどころがない、性悪な性格も存在感が大きくなって。

「それでも、自分が一番の極上なオトコだっていうんでしょ?」

からかうように答えてみた。

私のその答えを予想していたのか、海は肩をすくめただけで肯定の気持ちを表した。

本当、食えないオトコだ。

「真珠の会社の受付嬢たち、半端なく綺麗だな。それに会社のアイドルだっけ?
自己紹介の時に自分でそう言ってたぞ。確かに可愛い子だったけど、かなり自意識過剰だな。まあ、あっけらかんとそう言って笑ってたから、ある意味ネタで言ってるのかもだけどな。
こっちが極上のオトコでそっちが極上のオンナだったから、店中の注目浴びて気持ち良かったよ」

「やっぱり。海ならそういう注目される状況を楽しめるもんね。
わざと自信のある顔作ってみたりしてさ。……私行かなくて良かったよ。
行ってたら私一人貧弱なオンナだった。あーこわ」

海の向かいに座って、テーブルの上にあるピッチャーからコーヒーをグラスに注いで一気に飲んだ。そして、ふと気づくと。

「ん?どうしたの?」

何だか拍子抜けしたような、どこか気持ちが抜けてる海がじっと私を見ていた。

「お前、ばかじゃないの?」

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