桜空あかねの裏事情
今日の午前中。
皆が朝食を取ったのを確認すると、結祈は普段と同じように食堂、図書室、廊下の順で掃除していた。
しかしその所々の合間に、ジョエルを始めとするはた迷惑な大人達に妨害に近い呼び出しを幾度となくされ、廊下の掃除がままならず、思いのほか掃除が延びてしまっていた。
休憩を後回しにし、早急に終わらせた結祈は、昼食を取ろうと食堂に向かった。
そしてそこで、運悪く呑気にコーヒーを淹れているジョエルに出くわしてしまい今に至る。
「フッ……一番汚いなど、私の部屋以外を掃除した事ないのに、随分とはっきり言うのだな。確かに書物で溢れ返ってはいるが、存外綺麗な方だろう」
「そう悪ぶれる事なく言い切れる、貴方の感性を疑います。加えて言わせて頂きますが、愛読書は今朝、叩き起こされて探したと思いますが?」
通常なら午前六時に起床だったはずが、ジョエルの一件により今日、結祈は午前四時に起床していた。
その所為なのか、彼の表情は疲れ気味で、やや辛辣な物言いである。
「それは自室にある。私が言っているのは“異能者見聞録”の方だ。見つけたのはいいが、図書室で複数の書物を漁っていたら、いつの間にかどこかに消えてしまってな」
「それは消えたのではなく、紛失したのでしょう」
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