桜空あかねの裏事情

呆れながら言えば、ジョエルは口元に笑みを浮かべる。


「どうであれ、無いもの無い」

「はぁ…………え?」


溜め息の後に何かに気付いたのか、間をおいて疑問に声を零す結祈。


「何だ?」

「いえ、大した事ではないのですが……今の題名の書物は、確か異能者の歴史書ですよね?」

「そうだが?」

「今更、貴方に必要な書物ではないかと思いまして」


“異能者見聞録”
それは著者不明の異能者の歴史が、書かれている書物。
近年だけでなく、古代の時から近現代までに、存在していた異能者達の事が記されている。
古代の異能者の事まで記されている書物は、現代では極僅かで尚且つ、この書物は異能者が直筆書いたものと推測されているので、その中でも大変貴重な書物の一つである。
現在はジョエルの所有物ではあるが、長年の間に培ってきた知識と独自で研究している彼に、今更改めて読むものでもなかった。


「確かに昔はよく読んでいたものだ。故に大抵の内容は頭に入れてある。今の私が読む必要はない」

「………もしかして、あかね様ですか?」


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