桜空あかねの裏事情
何気なく言い放った言葉は、結祈に容赦なく深く突き刺さる。
「ッ…僕は……」
動揺し始めている彼を見て、陸人は溜め息をついた。
「ハァ……変な事言っちゃった。あんま気にしないで。んじゃ、ボクもう行くよ」
陸人は牛乳をそのまま片手に持ってド扉へ歩いていく。
扉に手を掛けて開けば、目の前には帰宅したばかりであろう朔姫の姿があった。
「あ、朔姫じゃーん!おかえりー」
「ただいま、陸人さん」
陽気に迎えれば、朔姫は軽く微笑んで会釈をする。
顔をあげた彼女の視線は、片手に持つ牛乳パックを捉える。
「あの……牛乳を持ってどちらに?」
「部屋。あ、そうそう!折角会えたし朔姫にも言っておこ」
「はぁ……」
陽気な振舞いにどうでもいいことを言い出すのではないかと、朔姫はジト目で陸人を見つめる。
「僕ね、実家に帰るから」
「え?」
始め何を言っているのか分からず、朔姫は呆然としていたが、徐々に意図が理解出来たのか目を二、三瞬かせ、声を零した。
「どうして……」
「いやぁ、遅い反抗期ってヤツ?ジョエルがいけないんだよ」
「でも二ヶ月は待つって昨日――」
「ああ、それね。建前だから」
陸人の悪びれない言動に、驚愕していた朔姫は悲しげに俯いた。
「そう……ですか」
「ごめんね朔姫。ボクはこう見えて狡い大人だから」
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