桜空あかねの裏事情
黎明館 周辺
「アーネストさん。今日はありがとうございました。夕食まで奢ってもらっちゃって」
「こちらこそ。貴重な時間を、私と共に過ごしてくれた事をありがたく思うよ」
太陽が沈みきって、夜空に星が輝き始めた頃。
ヴィオレットもといプラティアを後にしたあかねとアーネストは、黎明館への帰路についていた。
「君もあの店を気に入ってくれたみたいだし、湊志も君の事を気に入ってくれたから良かった」
「……そうですね」
心なしか、安堵しているアーネストの言葉を聞きながら、あかねはヴィオレットを去る直前の出来事を思い出していた。
―――――――
「さて。今日はあかね嬢もいる事だし、そろそろお暇しようかな」
「ツケはなしだよ」
「分かってるさ。あかね嬢、少し待っててね」
そう言い残して、アーネストは部屋を後にする。
同時に残されたあかねと湊志の間に沈黙が訪れる。
その沈黙は決して嫌なものではなく、むしろ居心地の良いものであった。
「……あかねちゃん」
不意に名前を呼ばれ、ゆっくりと彼の方へ顔を向ければ、彼は優しく笑った。
「やっぱりアーネストが言ってた通り良い子だね」
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