桜空あかねの裏事情
「…あ、ありがとうございます」
面と向かって言われた所為か、少し照れくさそうにあかねは微笑む。
「またこの店に来てね。僕の妻にも会わせたいし、ディナーでも少し割引してあげるから」
「はい!」
互いに笑い合う。
すると何か思いついたように、湊志が掌を軽く叩いた。
「そうだ。せっかくだから、君を通して少し視えたものを教えてあげる」
「え?」
「現在。新しい環境と共に、君を取り囲んでる人が何人もいるね。一人は拒絶したり、一人は悩んだり……人によって様々だ」
呟くように紡がれる言葉を、不思議に感じながらも耳を澄ませる。
一方、湊志は瞼を閉じて更に言葉を紡ぐ。
「その中でも一際、君の近くで様子を伺ってる子がいるね。あかねちゃんは信頼しているみたいだけど、その子はあかねちゃんに対して様々な感情を抱いてるみたい」
「様々な?」
「うん。強い感情だと憧れ、親愛、心配、そして……依存」
「依存?」
あかねは思わず眉を顰める。
「この子もあかねちゃんと同様に、強い輝きを放っているけど、時々黒い靄が掛かって霞むね。これは……ちょっと読み取れないかな」
言い終わると湊志は瞼をゆっくりと開けて、翡翠の瞳にあかねを映した。
.