桜空あかねの裏事情
養成所 某所
「ざっとこんなものだ。あまり紹介出来なくてすまない」
「いえ、そんな事ないです!色々と教えてくれて、ありがとうございました」
駿が付き添ってくれたお陰で、迷う事なく見学出来た上に、養成所にいる異能者達と関わる事ができた。
それだけでも、あかねにとっては大切な経験となり、大きな収穫となった。
「こちらこそ。君と過ごした時間はとても有意義だった。それに……君は少し変わっている」
「そうですか?」
「異能者にしてはな。さて、知り合いがいるところまで送っていこう」
「あ、大丈夫ですよ」
そもそも終わったら校門で待っていろと言われただけで、ジョエルがどこにいるかもあかねには分からなかった。
「だが…」
「葛城先生ー!」
「早く早くー!」
「……生徒さん達も呼んでますし、ね?」
あかねがそう言うと、駿は軽く溜め息をつく。
「全く。すぐ行くから待ってろ」
「「はーい!」」
幼年の生徒が揃って返事をする。
「ふふ……葛城さん、人気者ですね」
「そ、そうか」
駿は照れ臭そうに視線を逸らす。
その様子を見てあかねは微笑む。
「ゴホン。まぁ、それは置いといて。君の言葉に甘えてここで解散とするが、本当に平気か?」
「はい。大丈夫ですよ。もう高校生ですし」
「…そうか。だが最近、君ぐらいの年頃の異能者誘拐がやけに多い。連れがいるなら心配ないと思うが、くれぐれも気をつけてくれ」
「はい。分かりま――」
「あかねちゃーん!」
話の途中で名前を呼ばれ視線を移せば、先程まで仲良く話していた女生徒達だった。
「今日はありがとー!楽しかったよー!」
「また来てねー!」
「今度はお友達も連れてきてね!」
「うん!私も楽しかったよー!また遊びに行くねー!」
手を振る生徒に同じく振り返すと、満足したように女生徒達は教室に戻っていく。
「はぁ……騒がしくてすまないな」
「私はこれくらいが好きですよ。」
「だが落ち着きがないだろう。あれでは社会に出て苦労しそうだ」
「んーそうですかね」
確かに自分が知る異能者達は、礼儀正しく大人しい性格の者達が多い。
だが。
「異能者でも個性があるのは良いことだと思います。それに、いくら博識でも陰険は嫌です」
「?……君にも嫌いな奴がいるのか」
嫌いと断定されると何故か、素直に頷くことが出来ないあかね。
だが、いけ好かない奴だとは思ってはいるのは確かである。
「いない事もないです。今日は本当にありがとうございました」
「ああ。また来てくれ」
「はい!」
駿に見送られながら、あかねは背を向けて階段を降りていった。
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