桜空あかねの裏事情


「その上で自分の意見を話すなら、相手だってきっと耳を傾けてくれるはず。例え聞き入れてもらえなくても、説得しようと努力する事はできるもの」


――少なくとも私はそうする。
あかねは心の中でそう呟く。


「今の私は、まだ完全に信じてもらえてないから、それさえ難しいことだけれども……それでも相手の意見にだって、ちゃんと耳を傾けたい。例え喧嘩してでも、知りたいし分かりたいの。それが一番大切な事だと思うから」


あかねは自分が思った事を全て伝える。
嘲笑される事を覚悟で恐る恐るジョエルを見れば、彼は嘲笑どころか皮肉な笑みさえ見せず、観察するように見続けていた。


「……君にしては、少し混乱しているように見えるが」

「それは自分でも分かってる」


そもそも話の流れでそうなっただけなのだが、ジョエルに対して自分がここまで言うとは思わず、あかね自身動揺していた。

――これって一応、ジョエルを説得してるようなものかな。


「要点だけ言えば、お嬢さんは私の本心が知りたい。という事で合ってるな?」


ジョエルが簡潔にまとめた答えに、あかねは力強く頷く。

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