桜空あかねの裏事情

「そうか。全く、君はやはり……」

「?」

「いや……仕方ない。我儘なお嬢さんの為に一度だけ言おう。私は彼が所属する事には賛成だ。むしろ目論み通りだ。けしかけた甲斐があったと言える。実力は未知数だが、それだけの可能性を秘めているからな。その上、彼は自分自身をよく理解している。今のこの状況を打破するにもって来いの人材だ」

「うわぁ」


本心と言えば本心なのだろうが、悪びれることもなく自らの黒い腹の内をさらけ出し見事に言ってのけるジョエル。
自分から聞きたいと言ったとはいえ、聞かない方が良かったかも知れないと少し思ったあかね。
しかしそんな様子に構うこともなく、ジョエルは尚も話し続ける。


「ちなみに彼は君と同様に社交性もあるからな。朔姫達ともすぐに馴染めている。何より君にとって良き相談相手となり、支えになるだろう」

「そうだけど、それは本心?なんか怪しい」

「さぁな。知りたければ、君の言うものを築いた上で見極めるといい」


それ以上言うつもりはないのか、そこで会話は途切れる。
今一つ意図が掴めず、あかねは黙って思案している傍ら、ジョエルはいつもの皮肉気な笑顔が次第に貼り付けられていく。


「これが私の答えだ。満足したかな?お嬢さん」


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