桜空あかねの裏事情

やるからには全力で。
そう心に決めたあかねは、無所属の異能者を探す傍ら、結祈や昶に体験談や現在の情勢を聞いたり、ジョエルから与えられた異能者に関する書物を欠かさず読んだりしていた。
その中には、当てつけとも言えるような難解なものも紛れ込んでいたが、内心悪態をつきながらもそれを拒否することはせず、黙々と読み続けていた。


「私から見れば、風当たりも決して弱くないのにリーデルを目指し、オルディネを守ろうとする君の姿は、実に健気で愛らしい」


髪を撫でながら、諭すような口調をするアーネスト。


「それに崖っぷちなのは、君の所為ではないからね。正直二ヶ月で二人ほど集められれば、上出来だと思っていたから」

「え…」


アーネストから告げられた事実に、思わず声を漏らして唖然とする。


「いくら無所属の異能者を探すとしても、異能者のいの字も知らない少女には、とても酷な話だったからね」

「……」


常に自分に何かしら助言を与え、相談相手にもなってくれて、昶同様心強い味方であるアーネスト。
そんな彼の本音を聞いて、あかねは頬を膨らまし、ふてくされたように顔を背けた。


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