桜空あかねの裏事情
「ははっ。いじけないで、あかね嬢」
「…アーネストさんにそう思われてたなんて、心外です」
言葉を掛けるが、なかなか機嫌を直そうとしないあかね。
アーネストは苦笑するが、どこか楽しそうでもあった。
「実の事を言わなかったのは、悪いと思っているよ。けれど今は、その時以上に期待しているんだ」
「むぅ………」
「あかね嬢なら本当に出来るかも知れないって。現に一ヶ月で二人も集めたんだから。あまり深く考えず、自信を持って」
上手く丸め込まれた気がしなくもないが、アーネストの言葉には説得力があり不思議と落ち着く。
だが一つ心残りがあった。
「……そう言ってくれるのは嬉しいですけど、葛城さんは分からないです」
「え?」
「おーい!あかねー!」
落ち着いた声と陽気な声が重なる。
あかねにとってそれは、どちらも聞き慣れたものであり、自分の名前を呼ぶ方へ振り向くと、昶がこちらに向かって歩いていた。
「んなとこに座ってどうしたんだ?ってか話終わった?」
「まだ途中。軽く追い出されたの」
「まじか。じゃあ今フリー?」
「んー……」
返答に困り思わずアーネストの方へ振り返ると、彼は興味津々の眼差しで昶を上から下まで眺めて、あかねに尋ねる。
「もしかして、彼がジョエルの言ってた一人目かな?」
「はい。私のダチの昶です」
笑顔で答えればアーネストは立ち上がって、爽やかな笑顔を貼り付けながら、昶の正面に立った。
「初めまして。話は聞いてるよ。私はアーネスト・ウィンコット。よろしく」
「え!えーと……あかねのダチの香住昶です!今日からお世話になりますッ!」
いきなりの紹介に驚いたのか、慌てながらも勢い良く挨拶をする昶。
そんな様子を見ながらも、アーネストは変わらず微笑んでいる。
「元気だね。今のオルディネにはないタイプだ」
「ど、どうも」
「ジョエルにいびられるかも知れないけれど、頑張ってね」
「え」
「じゃあまた後で」
一方的に話を終わらせると、アーネストはあかねの方へ振り向いて一言告げて笑顔で去っていった。
「……ふぅ。緊張した」
完全に遠退いたのを見計らい、昶は一息ついて安堵したかのようにそっと胸を撫で下ろした。
「アーネストさんは優しいよ」
「だろうな。でもなんつーか……見た目的にホストっぽくて、なんか裏ありそうな感じ」
ちょっと苦手。と昶は苦笑しながら呟く。
「んー……瀬々みたいな情報系の異能者だからじゃない?」
「あー、そう言われっと納得」
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