桜空あかねの裏事情

「何が言いたい?」


からかうような物言いに、ジョエルは眉を顰める。


「君の本来の役職は、リーデル代理兼相談役。あかね嬢を惜しみなく支え、彼女が困っていたら善き助言者となる。そういう解釈で合ってるかな」

「ああ。否定はしない」

「それなのに君ときたら、異論どころか意見さえ言わない。まるであかね嬢の言いなりみたいだ」


その言葉に、ジョエルは不快感を覚える。
だが少なくとも比較的温厚な旧友がそういう言い方をする時は、何か探っているか企んでいるかのどちらかであると、充分理解していた為、特に何か言おうとはしなかった。


「君は内心、あのような輩を栄誉あるオルディネに所属させたくないだろう。タイプ3はともかく、あの少年は災厄にもなりかねない」


異能者と枠に括られていたとしても、当然個性はある。
体系、性格はもちろんのこと。
しかし異能者にとって重要なのは、それぞれが持っている異能である。
全く同じなものもあれば似たようなものもあり、またその異能によって個人の人生が決まってしまうこともある。
ようは千差万別。
しかしその中でも危険性の高いものや、希少価値の非常に高いものが僅かだが、確かに存在する。


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