桜空あかねの裏事情

それに怯むこともなく、アーネストは冷静にジョエルを見据える。

彼が絡むと、ジョエルは必要以上に感情をさらけ出す。
未だにあのことを受け入れられてないのだと、一種の憐れみを感じる。
しかしそれ以上に逆撫ですることはせず、かと言って遠慮する事もなくアーネストは話を続ける。


「彼に似ていても彼じゃないのは、当然の事さ。まがい物なんて、あまりにも失礼じゃないのかい」

「まがい物をまがい物と言って何が失礼なのか。とは言え、確かにお嬢さんには失礼だな」

「……」

「彼女は、私の最高傑作にして最大の欠陥品だ」


彼の思惑に嵌りながらも、このオルディネの為に奔走している少女を、まるで自分の私物であると言わんばかりの物言いに、アーネストは思わず怪訝そうに眉を顰める。


「随分と不快な言い方をするね」

「だが事実だ。私に希望を抱かせるのも、絶望へ陥れるのも全て……彼女なのだから」

「………」

「クックッ……そんなに真実が知りたければ、得意の探索能力を活用してみてはどうかな?」


再び自室のドアノブに手をかけて、ドアを開ける。


「……君が彼にした事を恨みはしないが、許したわけでもない」


アーネストは目を伏せる。


「だからこの際、言っておくよ。君が由季にした事をあかね嬢にもするのなら、今度は私も黙ってないと」


言い終わる頃には既にドアは閉まっていて、今までの緊迫感が嘘のように心地よい静寂が訪れる。
そして。
暗い自室に戻っていったジョエルに、自分の言葉が確かに届いている事をアーネストは密かに信じていた。


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