桜空あかねの裏事情

黎明館 食堂




お茶会という名目で半ば強制的に食堂に連れて来られた俺は、目の前の光景に硬直していた。



「お待たせしました」


食堂までの道のりの間に、結祈と名乗った少年が新鮮な果物を盛った小皿をテーブルの上に置く。


「わーい!苺とさくらんぼ!」


自分の向かいに座る唯一顔見知りである少女は、年相応のあどけなさで目の前に置かれた小 皿から、嬉しそうに苺を頬張った。


「……うまそ。なぁなぁあかねー。苺でもさくらんぼでもいいからくれ。あーん」


つい先程知り合った昶という陽気な少年が羨ましそうに呟くと、隣に座るあかねに促すように口を開ける。


「あーんって……私らカップルだっけ?つか私のイチゴちゃんとさくらんぼちゃんはあげないよ」

「ひっでー!ダチじゃないのかよ!」

「一番のダチだよ。でも食べ物に関しては話は別」


そう言ってあかねは見向きもせずに、食べ続け る。


「まじ鬼畜だ」

「香住くん」


恨めしげに見る昶に声を掛けたのは、彼の左隣に座っていた名も知らぬの少女だった。
色素の薄い金髪を綺麗に束ねたその少女は、フォークで刺した苺を、昶の前に突き出した。


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