桜空あかねの裏事情
「なるほどな。養成所と一言で片付けても、大変そうだ」
「…貴方は?」
「ん?」
「彼女をどう思っているんだ?」
俺がそう問えば、ジョエルは含み笑いを零した。
仮にも五指の一人である彼が、年端のいかない少女にオルディネの人選を委ねる意図が理解し難かった。
それが本音だった。
相応の実力があるのか、或いは人を見る目があるのか。
思考を巡らせながら、答えを待つ。
「お嬢さんね。言いたいことは山ほどあるが、強いて言うなら……単純でお転婆で我儘な小娘さ。クックックッ」
口端を吊り上げて、ジョエルは愉快そうにのどを鳴らして笑う。
その様子に俺は思わず怪訝な表情を浮かべる。
彼から発せられるのは褒めるどころか、むしろ小馬鹿にしているような物言い。
彼からしてみれば、彼女はその程度なのだろうかと更に疑問は増す。
「異能もろくに使えない上に、身の程も弁えず私に口答えするのはお嬢さんくらいだ。だがそれくらい強気でなければ、リーデルにはなれない」
「何?」
俺は耳を疑った。
しかしジョエルは相も変わらず、愉しげな様子だった。
「言おうと思ったが、タイミングが合わなくてな。お嬢さんはこのオルディネの唯一のリーデル候補だ」
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