桜空あかねの裏事情

凄みを効かせた駿の声色に、昶は思い切り首を振る。


「まさか!そんな短時間で終わるわけないっすよ!」

「だったら早くやれ」

「へーい!ふぅ……怖いセンパイだ」


そう言いながらも、どこか愉しげな様子で、再び課題に取り組み始める。


「全く。いきなり何を言い出すかと思えば……交換したのは成り行きだ」

「やっぱり交換したんですか?」


不思議そうに様子を見つめているあかねの呟きが聞こえたのか、駿は慌てて咳払いをし、いつもの仏頂面で話し始める。


「話を戻すが、この異能石は作り手と使い手の相性が大きく影響する。持っていたところで、そう簡単に使いこなせるものではないんだ」

「そうなんですか」

「ああ。その証拠に、俺はこの異能石をろく使えた事はない。俺の体質もあるのだろうが、恐らく相性があまり良くないのだろう」


そう言い終わると、異能石を静かに戻す。


「それって誰でも作れるんですか?」

「作れるには作れるが、先程のような大きさの場合は、能力が安定していないとまず難しい。と言うのも、石を作るにはこの恩恵を受けるであろう人を想って、自分の異能を石にして分けて作り出すからだ」

「はぁ……」

「要は普通に能力を使う時より、異能石を作る時の方が、作り手自身が大きく影響するという事だ。」

「ってことは、想像力や精神力が普段以上に必要って事ですか?」

「そういう事になる。能力が安定していても、相手の配慮を怠れば石は出来ない。まぁジョエルやアーネスト辺りの高度な異能者なら、石の形を好きに作る事も可能だろうな」


確かにジョエルやアーネストは、実力者として名高い。
自分達が四苦八苦するこの状況を、難なく一瞬でやり遂げるだろう。
そう思うとあかねは、自分がどれだけ非力なのか再度思い知らされる。

――もっと頑張らなきゃ。


「さて、話はここまでだ。君は引き続き氷の異能の――」

「やぁ、ちょっといいかい?」


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