桜空あかねの裏事情

黎明館 二階



目覚めたばかりの俺は、目の前にある光景と自分の状況を冷静に整理していた。


「目が覚めて良かったです。皆さん心配しておりましたから」


心底安心したように笑う少年に、合わせたように笑う男――泰牙(タイガ)は陽気に彼に話しかける。


「心配かけちゃってごめんよ。正直、死ぬかもって思ったぐらいだからさ」


少年は僅かに眉を寄せて、悲しそうな顔をする。


「でも君のお陰で、怪我は大分治った。本当感謝してるよ」

「そんな……自分は当然の事をしたまでですから」


表情は変わらないものの、そうはっきりと告げる少年に俺は変わらず笑顔を貼り付ける。


「そういえばここは、プラティアじゃないんだよね?」

「はい。戸松駅周辺の住宅街です」

「戸松……初めて聞くね。九州とか四国じゃないよね?」

「はい。戸松は関東です」

「そうなの?ってことは……すっごい都会じゃない!俺、関東初めてだよ!」

「そ、そうでしょうか?」


少年は返答に困ったのか、あやふやにしか言葉を返しぎこちない笑みを浮かべる。


「そう言えば、まだ君の名前を聞いてなかったね」

「あ、はい。自分は結祈と申します」

「結祈くんかー。なんだか女の子みたいな名前だね」

「ええ…よく言われます」


結祈と名乗った少年が苦笑しながらそう言うと、ドアが開く音が聞こえた。
入ってきたのは、先程少し言葉を交わしたアーネストと名乗った男と、思わず見とれるほど澄んでいる青い瞳が印象的な少女であった。


「では、自分は失礼させて頂きます」


二人が入ってきたのを確認すると、結祈はそう告げて頭を下げ、速やかに部屋から出て行った。
俺は特に気にする様子もなく、やって来たアーネストに視線を向けると、彼も同じように笑みを向けた。


「予想以上に元気そうで安心したよ」


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