桜空あかねの裏事情

「そりゃあね。結祈くんから聞いたけど、俺5日も寝てたみたいじゃん。元気百倍だよ!」

「ははっ。それはそうだね」


互いに笑いあうと、アーネストの後ろにいる少女は、戸惑いつつも話を聞いていた。
俺は何故か無性に気になり、聞いてみることにした。


「気になったんだけど、後ろにいる子は?」

「ああ、紹介するよ」


彼は少女の背を軽く押し、前に出した。
いきなりの事に緊張していたのか、少女はどこかぎこちなかったが愛らしい笑みを浮かべた。


「この子が君を見つけたんだ」

「へ……そうなの?」


自分を発見したのが少女であると聞かされ、驚いて俺は視線を向けると、少女は戸惑いを隠せぬまま口を開いた。


「え……と、桜空あかねです。元気そうで安心しました」

「君みたいな子にも心配掛けちゃったんだね。俺の名は泰牙。見つけてくれてありがとね」

「あ……はい」


落ち着かせるように俺がそう言えば、あかねと言った少女は、今度は嬉しそうに笑う。
猜疑に塗れた俺には眩しく感じた。


「さて、あかね嬢。私達はそろそろ退室しようか。彼もこんなに元気に見えて、まだ万全の状態じゃないからね」


自分の体調を気遣ってか、ある種の牽制を込めているのか。
それは分からなかったが、アーネストは今はこれ以上話すつもりはないのだと、俺は思った。
しかし当のあかねは、まだ話したいのか物言いたげに一度だけ俺を見て、少し間を空けて頷いた。


「……はい。分かりました」

「では私達は失礼するよ」


アーネストはそう言うと背を向け歩き出し、あかねも続くように歩いていこうとして、振り返る。


「あの…」

「なんだい?」


控えめに声を掛けられ、俺は変わらず笑顔で対応する。
すると彼女は少し考えてから、ようやく口を開いた。


「……大丈夫ですよ。そんなに無理して笑わなくても」

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