桜空あかねの裏事情
「え…」
不意に俺の心臓が跳ねる。
彼女を見れば、こちらをどこか心配そうに見つめつつ、更に言葉を続けた。
「体、まだ治ってないって聞いてます。ゆっくり休んで下さい。また明日来ますね!」
満面の笑みを残して、彼女は部屋を出て行った。
「………………」
二人が去って、未だ慣れない空間に残された俺は、目が覚めた時から今までの事を振り返る。
目を覚ました時に見えたのは、見知らぬ天井と男。
男の方はサングラスを掛けていて、その上俺自身も若干意識が朦朧としていたのもあって、素顔は見れなかったが、仮にも意識を取り戻したばかりの怪我人に対しての第一声の皮肉を聞くに、俺が目を覚ますのを待っていたようだ。
言いたい事を言うだけ言って立ち去る男と、入れ替わるようにやってきたのは結祈と名乗る少年と、アーネストと名乗った青年だった。
結祈は新しい衣服と食事を提供し、体調を聞いてきたり包帯を取り替えたりと、自分より幾分か年下のはずなのに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれていた。
一方でアーネストは落ち着いたところで、俺が何故このような状況に置かれているのか、簡潔に説明してくれて、まだ若干整理がつかない俺でも容易に理解する事ができた。
その間、二人は俺の身の上について聞くこともせずにただ接していた。
特に何も言っていなかったが、多分俺の事を知っている。
噂程度なのか本当に素性を知っているのか分からないけど、今までの経験からして、そうだと断定できた。
二人から殺意や敵意も感じなかったが、だからと言って味方であるとは言えない。
親切心で俺を保護したのかも知れない。
だったら尚更、ここには長く居られない。
奴らに知られるのは時間の問題で、早くしないと彼等と同様にこの人達も殺される。
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