桜空あかねの裏事情
しばらくして、アーネストは紹介したい人物がいると言って、部屋を出て行った。
それから間もなくして、彼が連れてきたのがあの少女。
柔和な物腰で一切の隙を見せないアーネストに対し、ぎこちない笑みを浮かべながらも嬉しそうに俺を見ている。
彼の話では、自分と一緒にいた人物が俺を見つけたと言っていたが、それが年端もいかない少女だったとは正直驚いた。
俺がいた場所は危険区域に指定されている第五区。
そこに秩序なんて無いし、俺みたいな訳ありの輩が息を潜めて生きてる場所だ。
こんな純粋な目をした少女如きが足を踏み入れる場所じゃない。
それに俺のような輩より、もっと厄介な奴らもいる。
同行人がいたみたいだけど、若い頃から危ない橋を渡るもんじゃない。
まぁ……それより驚いたのは、その年端もいかない少女に虚勢を見破られてたってこと。
そしてそれを真っ正面から告げられたこと。
逃げ続けて12年。
全てを失って、それでも生き続ける為に、感情を殺したように隠して生きてきた。
だから他人に悟られない自信はあった。
褒められた自信じゃないけど。
少なくともそうやって、日々をやり過ごしてた。
けどここにきて初めて、見透かされた。
初めて会って、数えるほどしか言葉を交わしてない、いたいけな少女に。
なんていうか……
俺を刺した子もそうだけど、子供ってホント恐いね。
あどけなさの中に何を隠してるか分からないもん。
まぁ生きてる人間が一番恐いんだから、当然っちゃ当然なんだけど。
俺が今会った中では多分
あの子が一番油断ならないかも知れない。
「なーんて……ただの憶測に過ぎないんだけどねぇ」
自嘲気味に軽く笑みを零した泰牙は、そのままベッドに倒れ込み、天井を仰いだ。
.