桜空あかねの裏事情


「……ふざけるな」


アーネストの主張を一蹴する一言。
いつも聞き慣れた声より低く、まるで周囲を凍らせてしまうような声に思わず肩が跳ねそうになる。


「お前のような下心から成る感情と一緒にするな」

「うーん……どうやら否定は難しそうだ」


言葉とは裏腹に愉しげな様子のアーネストを余所に、ジョエルは再びあかねに向き直る。


「アーネストの他にも、昶や藍猫の坊やと色々と話し合ってるみたいだが、よく相手を知りもしないで浅はかな決断は控える事だな」

「なにそれ。ジョエルだって泰牙さんの事、よく知らないでしょ。それに浅はかかどうかは、まだ分からない」


圧力を掛けるような強い口調で決め付ける。
何も彼の言いたい事が分からない訳じゃない。
彼にとってオルディネがどのような存在なのかも、理解しているつもりだ。
だが。


「新しい所属者を探すのは任せるって言ったのは、ジョエルじゃん!」

「そうだ。が、お尋ね者にも手を出せとは言っていない」

「けどお尋ね者には手を出すなとは言われてない!」


そう負けじと言い返して、思いっきり睨み付ける。
両者一歩とも譲らぬ強情さに、辺りが一層緊迫した雰囲気へと変わっていった。


「とにかく!何を言われようが、毎日泰牙さんのとこに行くから!んでジョエルが嫌だって言っても、泰牙さんにオッケーもらってオルディネに所属させちゃうから!」

「フッ…実力も実績もない、無知で生意気な小娘が。始めから出来ない事を言うもんじゃない。大恥をかくのは紛れもなく君だ」

「そんな事ない!」

「強情な。まぁそのザマを嘲笑うのも、悪くはない」


その一言に、あかねの堪忍袋の緒は限界だった。


「っ〜〜〜!ジョエルの馬鹿ッ!陰険ッ!変態ジジイッ!絶対に泰牙さんをオルディネに入れて、そのグラサン割ってやる!」


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