桜空あかねの裏事情
「………」
「その上ジョエルさんは、今も昔も見てきたから、あかねの事を誰よりも知っていると答えていました」
「ジョエルがそんな事を?」
アーネストの問に、静かに頷く。
「それを聞いて、ジョエルさんがあかねを選んだ理由は、素質以外にもあるのではと思いました。もしかしたら、二人は昔会った事があるのかも知れません」
あくまで私見ですが。と、そう言って口を閉ざした。
朔姫達が疑問に思っている事は、アーネストも常々思っていた事でもあり、水面下で探っていた時もある。というのもジョエルが絶対に口を割らないからで、あかねにそれとなく聞いてみたりしたが、出会ったのはやはり一ヶ月前の事で、それ以前に面識はないとのことだった。
だが彼女自身もジョエルは前から知っていると聞いたと言っているので、本人が忘れてる可能性も否めないが。
「朔姫が言うのも一理あるけど、ジョエルが一方的に知ってただけだったりしてね」
「では……以前から目を付けていたっていうことですか?」
「そうなるね」
断言すると朔姫は複雑そうな表情をした。
あかねや昶と関わるようになってから、常に淡白だった彼女の表情は、僅かながら柔らかく豊かになったとアーネストは思う。
「確かにあかね嬢は、御三家の出身でありながら他兄弟達に比べ、公の場に出た事は皆無に等しい。それなのに、以前からジョエルが知っていたとなると、些か疑問が残る。けれどね、彼があかね嬢を選んだ理由はなんとなく分かるんだ」
その言葉に朔姫はアーネストを見上げる。
「あかね嬢はね、先代……いや、先々代リーデルに似ているんだ」
どこか遠くを見つめながら、そうはっきり告げるが、朔姫はどうやら腑に落ちないようだ。
「……あの、言いにくいんですが、確か先代も先々代も」
「うん。どちらも男性だよ。既に亡くなっているけどね。でもあかね嬢は似ている。あの柔らかな雰囲気は先代。前向きで明るく純粋な言動や性格は先々代にね」
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