桜空あかねの裏事情
「…アーネストさんは先代、先々代に会った事があるんですか?」
「もちろん。先代は私のとても大切な友人だったからね」
アーネストはいつもより優しい笑みを浮かべる。
それだけでも、彼がその人達に対して抱く想いがひしひしと伝わってくる。
「そして先々代は……当時荒んでいた私に、自由いうものを教えてくれた人だからね」
「……大切な人達だったんですね」
「うん。とても大切だった。だからあの二人には、もっと生きて欲しかったけどね」
どこか悲しげに微笑むアーネストを横目に、朔姫は思考を巡らせる。
「お二人は、どういう人達だったんですか?」
当たり障り無いように尋ねると、アーネストは考える素振りを見せて少し間を置きながら話し始める。
「そうだね……先代は箱入り育ちだったから、浮き世離れした性格でね。その上、お人好しですぐに人に騙されたりして、色々あったけど優しく温かく……そして儚い人だったね」
「……そうですか」
「先々代は、あかね嬢とあまり変わらないかな。あ、でもかなりの女好きでね。あちらこちらで、愛人を作ろうとするんだけど、顔が童顔だったからモテなくてね。やけ酒でよく当たられてたよ」
「……部分的に変わった人ですね」
「ふふっ、そうだね」
ありのままで、かつ最もな感想に、アーネストは愉しげに笑う。
「ちなみに、先々代の能力はあかね嬢と同じ“模倣”なんだ」
「!……そうだったんですか」
「うん。だからジョエルがあかね嬢に期待しているのも、先々代の影響が少なからずあるのかも知れないね」
桜空あかねという少女に知り合って早くも一ヶ月と数日が過ぎた。
出会ったばかりだというのに、もうずっと前からそこにいるような馴染みやすさと、彼女が笑うだけで得られる安心感がアーネストは何よりも好きである。
――言いそびれたけど、あかね嬢と先々代にはもう一つだけ、似ているものがある。
それは私が初めて彼女と出会った時に鮮明に、確実に見たもの。
まるで本当に彼がそこにいるような錯覚に陥った時もあった。
そしてそれは、ジョエルにも同じ事を感じさせているだろう。
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