桜空あかねの裏事情

「良かった。思ったより元気そうで」

「まぁ怪我はしてないから」

「そうじゃなくて」


終始、言葉を遮る。


「自分の所為で、あかねを守れなかったと責めているんじゃないかって、少し心配だったの」


自分が先程まで思っていた事を言われ、昶は思わず沈黙する。


「でも今のあなたを見る限り、考え過ぎだったみたい」


その様子を特に気にかける事なく、朔姫は話を続ける。


「昶は強いのね」

「オレが?」

「ええ」

「そんな事ない」


昶は凛とした声で、否定する。


「朔姫の言う通り、オレが気絶したばっかりに、あかねを守れなかったんじゃないかって思ったりしてた」


――前のオレなら、ここで立ち止まって次の一歩を踏み出せなかった。


「けど今は、そう思うなら他にすべき事があるんじゃないかって、気付けたから」



昶がはっきりと答えると、朔姫は一瞬だけ驚いた顔をし、深く頷いた。


「……そうね。過ぎた事を悔やんでも仕方ない。昶に言われて、私も気付いたかも知れない」


その言葉に朔姫もまた悔やんでいたのではないかと、昶は思った。
あかねが攫われたのは、朔姫が駆けつけて敵に気を取られている隙。
既に戦闘にすら参加してない自分より、守れたのに守れなかった朔姫の方が何倍もそう感じるはずなのだ。


「あー……オレが言えた義理はねーけどさ、朔姫は凄いと思うぜ。あんだけの人数を相手にして無傷なんてさ」

「それは日々、鍛錬してるから」

「でも結祈は言ってたぜ。殺される時もあるって」


朔姫は自分達よりも遥かに先に、異能者として生きているのだから、当然ながらその危険を知っていてるはずだ。
それでも立ち向かっていったのだから、朔姫はあの場にいた誰よりも強い覚悟を持っていたに違いない。


「あかねの事はあれだけどさ、朔姫が無事で良かったよ」

「昶……」


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