桜空あかねの裏事情
「そんなに警戒なさらないで下さい。私は貴女の味方ですから」
「なら教えて。目的は何?誰の命令でが私をここに連れてきたの?」
瞳を逸らさず聞いても、黒貂は変わらず笑みを向けるだけ。
一瞬だけ困ったように見えたのは気のせいだろうか。
「残念ながら、私はその全てにお答えする事は適いません……矢一」
「はっ」
「!」
黒貂の背後に一瞬にして男が現れる。
「あ、あなたっ…!」
その男を見た瞬間、あかねの体は強張る。
顔は初めてみるものの、直感でそうだと思える。
服装もそうだが、こちらを見据える双眸が何よりの証拠だ。
私を連れてきたのは、この男であると。
震え出しそうな体をなんとか立たせ、距離を置こうと後退る。
その様子に男は気まずそうに、目を逸らす。
「手荒な真似をしてすまなかった。もう何もしない」
「そんなの――」
分からない。と言う前に男は再度、口を開く。
「信じなくてもいい。だが話だけでも、聞いて欲しい」
「………」
跪いて訴える男に、あかねは沈黙する。
話を聞くくらいなら出来る。
だが問題は、やはり信じるか信じないか。
この見知らぬ場所に連れてきたこの男が、これから話す事は果たして真実か。
――見極めよう。ジョエルの時も、出来たんだから大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、あかねはゆっくりと椅子に座り直す。
「……話して。あなたが知ってること全て」
曇りのない深い青の眼で男を見据えて、はっきりと告げる。
その姿に男は何故か驚いたような顔をしたが、すぐに深く頷いて話し始めた。
「まず我について話す。名は矢一。諜報としてアロガンテに所属している」
「アロガンテ?」
「チームだ。プラティア第六区を拠点としている」
「じゃあ……ここは」
「ああ。第六区にあるアロガンテの屋敷だ」
第六区。
以前、瀬々とアーネストと泰牙の事を話した時に、危険区域と言われた場所だ。
.