桜空あかねの裏事情
「そして我に貴女を連れて来いと命じたのは、アロガンテのオーナーだ」
「オーナー……」
言葉の通りチームの経営者なのだろうか。
「理由は?」
「付人だ」
「え?」
「先日、黒貂様の付人がオーナーの不興を買って解任された。その穴埋めとして、貴女が選ばれたのだ」
「はぁ……」
強制的に連れて来られたからには、それ相応の理由があると思いきや、不純どころか単純過ぎる。
あかねはどこか拍子抜けしてしまう。
「えーと……私を連れて来た目的って、それだけ?」
「ああ」
「人質とか売買とかされるんじゃなくて、ただの付人?」
「そうだ」
「……………」
再度確認すれば、呆れたような安心したような脱力感に襲われる。
オルディネや実家が関係しているのかと、勘ぐっていた自分が馬鹿みたいに感じた。
「理解は出来たけど、そのオーナーって人は何を基準にしたわけ?人の世話とか、ろくにした事ない私を選ぶなんて頭おかしい」
黒貂がアロガンテで、どのような立ち位置にいるかは分からない。
だがこれだけの広さのある部屋を与えられたり、オーナーが直に付き人を与えたりする辺り、それ相応に大切にされているに違いない。
普通に考えれば、付人でさえ厳選され実力もあり、信頼足り得る人物がなるのが妥当なはずだ。
身近で例えるなら結祈だろう。
もしかすると、選んだ理由もまた単純に、偶然オーナーの目に止まっただけなのだろうか。
「その点につきましては、ご心配ありません。貴女様には私の話し相手として傍にいて下さればいいのですから」
今まで黙っていた黒貂が、優しい笑みを浮かべて答える。
不思議と嫌な気はしない。
――けど、受け入れる事は出来ない。
「私には、やるべき事がある」
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